対談

2023.12.07

オープンハウス・アーキテクトがはじめた、新しい国産材活用のカタチとは。製材メーカー最大手の中国木材様と対談で語る。

オープンハウス・アーキテクトがサステナビリティ推進の一つとして取り組んでいるのが、国産材活用です。これらの活動も自社で完結することはなく、パートナー様と手を取り合いながら、より良い建築のカタチを目指しています。

その一社が、国内トップクラスのシェアを誇る製材メーカー、中国木材株式会社(本社:広島県呉市)様。同社で、20年以上にわたり木材と向き合ってきた新谷様と、年間約5,500棟の建築を行うオープンハウス・アーキテクトにて建材取引を行う渉外企画の武冨次長・蔦川係長に、国産材活用プロジェクト「GOOD LOOP PROJECT」の裏側についてお話を伺いました。

Cast

出演者紹介

  • 中国木材株式会社 営業部 本社営業推進課 係長

    新谷 光生 様

    2000年の入社以降、営業、経営企画を経て新規市場を開拓する部署へ配属。2017年、東京での木材の営業活動をきっかけに、「カフェ板」を開発。2019年にグッドデザイン賞、2020年に日本DIY商品コンテスト金賞を受賞する。木材のプロとして、木を活かす素材開発に情熱を注ぐ。

  • 建築管理部 渉外企画G 次長

    武冨 義也

    2018年にキャリア採用入社。渉外担当として、建材や設備メーカーなど各社パートナーと密に連携を取り、常に先を見越して資材供給に動くことで、オープンハウス・アーキテクトの安定した施工を支えている。

  • 建築管理部 渉外企画G 係長

    蔦川 忠宏

    2022年にキャリア採用入社。木造ハウスメーカーの資材購買・調達の経験を経て、オープンハウス・アーキテクトへ。会社の成長を通じて、建築業界を盛り上げたいという想いを持ちながら、各社との連携強化に励む。

パートナーとして連携をはじめたきっかけ

──2社がパートナーとして取組むようになった経緯について、教えてください。

新谷様:もともとは当社の構造材を建材としてお使いいただく形でお取引をしていました。また、2社とも日本木造分譲住宅協会(以下「木分協」)の会員として、国産材活用に取り組んできた中で、家を建てていただくオープンハウス・アーキテクトさんと、家の部材をつくる中国木材で、また何か違った形での取組みができるのではないか。そう思って、構造材以外の国産材活用についてもお話をさせていただくようになりました。

オープンハウスさんのブランドは、一般の方と身近で、かつ良いものを提供するという印象があって、私自身もいろんなところでお名前を見かけているような存在だったんです。当社の木材を使って、何かブランドに仕立ててもらえるのではないか、という期待感がありましたね。ブランドといっても、いわゆる高級で手の届かないようなものではなくて、頑張れば手が届くというコンセプトを持たれているのも身近に感じて好印象でした。

武冨:中国木材さんは、もともとベイマツのメーカーさんというイメージがありました。我々が3階建てを建築するうえで、強度の高いベイマツを使わせていただく必要があり、構造材のメーカーさんとして大きな信頼を寄せていました。

その他にも、中国木材さんでは、主に秋田県や宮崎県で国産材活用に力を入れていることを聞いて。私たちも何かの形で社会貢献ができないかを考えたときに、木分協での活動と並行して、国産材活用について同じ方向で動いていくことができると思いました。

 

ー 国産材活用には、どういった背景があるのでしょうか。

新谷様:従来、木材を伐採するというのは、一般の人にとって悪いことというイメージがありました。それがだんだんと変わってきたのは、木材は植林によって持続可能というのが世界的に認知されるようになったからです。

日本では、戦後すぐに復興事業で木材が大量に必要な時代がありました。その時に、国内の木材も活用することもありましたが、海外からも大量に木材を仕入れるという文化ができました。当時、まだ復興中の日本は貧しかったのですが、当時の日本人は国の資源だということをわかっていて、食料もないような時代から必死で木を植えたのです。70~80年も前に、当時を生きた方々が必死で植えた木が、現在日本に成長した状態で存在しています。これは、伐採して植え替えたらそのサイクルを継続することができるという証明でもあります。

問題は、日本が戦後に経済成長を遂げて、世界中から良い物が集まる国となり、木材も例外ではなくなっていったことです。世界から良い材が買い付けられるようになり、当社もベイマツという木材を素材とした製品を作らせていただくメーカーとして発展し、利益を上げて企業としても大きくなっていきました。とはいえ、日本にはスギの木、ヒノキの木が大量に植林された状態で使われずに放置されていたという問題が明らかになったのも、実はここ10年ぐらいの話で、それすら認知されてこなかったという背景があります。

 

ー 70年前に植林して育った森林が、今の課題とされているのですね。

新谷様:当社はおよそ10年前から国産材事業に参入しましたが、日本の山の現状を知れば知るほど、何とかしなければいけない状態で。これを今、オープンハウス・アーキテクトさんと共有することができて、私たちも本当に「よくぞ加わっていただいた!」という気持ちです(笑)

ただ、なかなか大変な状態が続いていますね。日本の木材需要量を、今の国産材で賄おうとすると200年分あって、しかも年間1億㎥増えています。それに加えて輸入材も存在するので、国産材のシェアはだんだんと上がってきてはいますが、まだまだ活用が追いついていないんです。

木材が管理しきれず、昨今深刻化している花粉症の問題や台風による被害なども起きています。さらにほかの面での課題でいうと、成長しすぎた丸太を運搬し、加工できる業者が少なくて、付加価値を与えることができません。当社は大径木を生産するラインも抱えているのですが、正直、採算性でいうと、中径木を買って柱などを加工したほうがコスト面ではよっぽど良いのです。

当社では、大径木の加工に加え、国産材をバイオマス発電の燃料にも活用しています。せっかく植えた木を、輸送費を使って、さらに燃料として燃やすのですが、そうでもしないと山に価値がなくなっていってしまうのです。大きな資源を住宅の資材に使って、変えていくことができたら、国の利益が長期的に継続することに繋がっていくのだと思います。

 

一目ぼれしたカウンターを商品化へ。

──「GOOD LOOP PROJECT」には、どういったメリットがあるとお考えですか。

蔦川:今、中国木材さんの国産材を家の骨組みに使わせていただいているのですが、それってやっぱり完成した時には隠れてしまう部分ですよね。私たちオープンハウス・アーキテクトとしてはお客様との繋がりが身近にあるので、そういった意味でも構造材とは別の活用方法で、環境課題や木材の歴史に触れていただくことができたらいいなと思っています。今回は、まさにお客様への価値もご提供させていただく形で、二社での連携を上手く活かすことができたのではないでしょうか。

新谷様:九州の南部ではこの飫肥杉(おびすぎ)というスギが、江戸時代からブランド杉として植林されてきました。当時は木造船の部材を作るスギとして最適なものとされ、明治時代には海外に輸出されたり、瀬戸内海を走っていたりした当時の大きな船は、大体この飫肥杉が使われていました。木造船はもう今や作られなくなり、あの大きくて長い木材というのは活用方法がなくなっていったのです。

ただ、この飫肥杉は、スギのなかでも脂分が多く、空気を多く含むのに適度な硬さを持つという、実は世界的な所で見ても珍しい特徴を持っています。生き物や人が触れるのにも、すごく向いている木なのです。

会長室に試作で作った飫肥杉の板が置いてあったのですが、なかなか商品化が叶いませんでした。そこでオープンハウス・アーキテクトさんがご来社いただいた時にたまたまそちらを見ていただいて、一緒に取り組みを進めることになったのですよね。

武冨:あのカウンターには、私たちも一目ぼれでした(笑)スギは、日本でもともと多く、馴染みのある木材にも関わらず、それが現代社会になってなかなか手に触れる機会がなくなってしまったってことは勿体ないですよね。我々住宅を作る会社としても、そういった構造材でしか使ってこなかったところがあり、今回のように表に出して、お客様に実際に触れていただくことができたら、機能や価値を分かっていただけるのではないかなと思っています。

 

循環を続けていけるような取り組みを2社で実現したい。

──「GOOD LOOP PROJECT」を、今後どのように進めていきたいですか。

新谷様:当社は素材メーカーですので、オープンハウス・アーキテクトさんのアイディアに叶うような素材をどんどん作っていきます。それを一般の方に身近で、そしていいものだと分かるような使い方をしていただけたら、メーカー冥利につきます。

それから、スギが一時期の価値観で妙に安物扱いを受けてしまっていて、それを言っているのは日本人なのですよね。その時の感覚が輸入材をベンチマークにスギを評価するという、スギにとっては不得手な見方をされて。自分は何か他人事じゃないような気がしています。苦手なことを当てはめて、ダメだと言われる風潮が長くあったのですが、実際こうやって触れてもらえば、その良さがわかりますので、まずは使ってもらえるように取り組んでいきたいです。

日本人の先輩方が選んで植えた樹種がスギで、それが悪いものであるはずはきっとないです。日本の学名で「クリプトメリアジャポニカ」というのですが、日本を代表する樹種を、何とかして次代へと繋いでいきたい。今回、こうやって一緒に取り組むことができて光栄です。

武冨:今回「GOOD LOOP PROJECT」として初めて商品を出させていただく中で、我々の知らない知識を新谷さんからたくさん教えていただきました。木造住宅を建てている会社ではありつつも、木材を循環させることの役割や重要性を改めて教えていただいて、そういった使命を持って我々も動いていかなければいけないのかなと。

住まいを建てて、そのままで終わらせるわけにはいかなくて、循環させて、どんどん日本の森に還元して、それがまた木材として戻ってきて、また新しい住まいを建てる。この循環をずっと繰り返していけるような取り組みをこの2社で実現できたなら、社会貢献にも繋がっていくのだと思います。

 

 

蔦川:私も木材の話をしていて、目から鱗だったことがあります。数十年前の日本の大量生産・大量消費の時代にアメリカやヨーロッパから大量に木材を安く輸入していて、なんでわざわざ遠くから買ってきて安いのか聞いたのですが、単純にいうと平地に森があるから。伐採も楽で大量輸送できるし、為替も安かった。一方で、日本は森もたくさんあるけれど、山です。そうすると林道を作るなど、初期投資が必要。そこがなかなか今まで誰もなんとなくは分かりつつも、手を付けてこなかったことは、我々の責任だと感じています。

まずは、私たちもできるところから、中国木材さんと一緒に環境貢献をしていくことができたらと思っています。


新谷様:スギ以外のほかの樹種についても、どうしても植林した後、最も短期的であっても40年は経たないと、その結果を評価することができません。実は今の林業業界はそうした状況にはあるのですが、全員正解で、それこそ多様な可能性があるのです。戦後の皆伐と植林から今豊かな山林があるので、そこに間違いはなかったとも言えると思いますし。何が正解かは本当に分からないので、まずは今取り組めることから一生懸命にやっていきたいですね。

 

※インタビューの内容は取材時(2023年11月)のものです。