対談

2026.05.01

工期13%短縮を支えた「Architect Jump」とは。現場 × DXの裏側トーク

DXにおいて、最も難しいのは「現場への浸透」だと言われています。オープンハウス・アーキテクトが展開する「Architect Jump」シリーズは、工期13%短縮、出戻り費用8割削減という劇的な成果を挙げています。
アナログな管理を打破し、大工の電子請求率98%を実現した秘話や、AI活用の次なる一手まで、現場の知恵とテクノロジーが融合して生まれた、DXの軌跡を紐解きます。

Cast

出演者紹介

  • DX推進部 次長

    田中 健次

    2020年キャリア採用入社。大手銀行系システム会社を経て、OHAへ。Architect Jumpを開発し「2022年度グッドデザイン賞」を受賞。木造系システムの責任者として現場DXを推進。

  • 名古屋事業部 名古屋第一施工G 課長

    山田 春樹

    2020年新卒採用入社。現場監督時代に全国トップの施工成績を収め、マネージャーとして若手5名の育成を担ったのち、新設の三河事務所の拠点責任者に就任。

現場200カ所でのヒアリング。属人化の限界を突破する「型」の追求へ

── 「Architect Jump」シリーズの開発のきっかけを教えてください。

田中:
私がこの開発に着手したきっかけは、入社時に「木造施工管理体制をより良くできないか」というミッションを頂いたことでした。当時の現場を調べて真っ先に感じたのは、情報の断絶です。現場では、紙、電話、メール、Excelが複雑に飛び交い、管理は担当者ごとの「属人化」に陥っていました。会社が成長し、施工棟数が増えていく中で、このままではいつか限界が来ると危機感を覚えました。

山田:私が入社した2020年当時は、まだ前身のシステム(KIZUNA-X)を使っていましたね。そこから抽出したExcelで管理を行うなど、それぞれで管理が行われていました。

田中:組織として成長するためには、誰が担当しても一定のクオリティを担保できる、オープンハウス・アーキテクトとしての標準的な「型」を作る必要がありました。そこで行ったのが、関東、名古屋、関西と、計200カ所もの現場を自ら回るヒアリングでした。

── 200現場を回って、印象的だった気づきはありましたか?

田中:
現場を回って最も大きな気づきだったのは、職人さんたちのシステムリテラシーに対する認識です。正直に申し上げて、私たちが想像していた以上に「難しいツールは使われない」という厳しい現実がありました。

既存の汎用ツールを導入する道もありましたが、汎用ツールは人間がツールの仕様に業務を合わせる必要があります。私たちの場合は、「既存業務をより良くするために、業務にシステムを合わせる」という自社開発の道を選びました。工種も年齢もバラバラな職人さんたちの行動を観察し、彼らが共通して求めている「使いやすさ」の本質を見つけ出す。そこからすべてが始まりました。

現場を待たせない「0.1秒」のレスポンスと、職人目線のUI/UX。

── 「Architect Jump」シリーズを使い始めた当初に感じられたことはありますか?

山田:
『Architect Jump』を初めて触ったとき、まず驚いたのがアプリの「軽さ」でした。以前のシステムから、体感で100倍くらい速くなった感覚でした。現場の住所や図面がスマホで即座に確認できる。当たり前のようでいて、現場監督にとってはこれだけで劇的にストレスが減りました。

田中:実際の開発でも、まずアクセススピードを改善することにこだわりました。現場の職人さんは、作業の手を止めてスマホを見ています。そこで数秒待たされるだけで、大きなストレスになる。『Architect Jump』では、0.1秒でパッとアプリにアクセスして、必要な物件情報を見ることができるように設計しました。現場のスピード感に合わせて「待たされる時間」を限りなくゼロにしたかったんです。

山田:操作感も大きく変わりましたよね。

田中:以前はリスト形式でしたが、スマホでパッと見たときに「今日どの職人さんが来て、明日はどうなるか」が直感的にわかるようにカレンダー形式を採用しました。特に大工さんのように多忙な職種については、余計な機能を見せず「必須項目だけを確認すれば完了する」という極限まで削ぎ落としたシンプルな操作性を意識しています。ただ、これで終わりではなく、どんどん良くしていきたいと思っています。

山田:そうですね。私自身も、業務効率化を追求する中で、より早くでき、現場を楽にする方法を常に考え、改善点や要望を積極的にDX推進部に伝えています。

田中:山田さんのように、要望を出してくれる現場メンバーの存在は非常にありがたいです。現在100件ほどの改善要望が寄せられていますが、こうした「もっと良くしたい」という声がDX推進部と現場の一体感を作っています。

現場とDX部門が一体となった推進体制。

── 良いツールを作っても、現場への浸透がなかなか進まないというのが一般的ですが、その点はどう克服されたのでしょうか。

田中:
おっしゃる通り、ツールを作っても浸透には大きな壁があります。特に名古屋事業部は、以前から独自のメソッドが確立されており「本当に新しいツールが必要か」という戸惑いの声もありました。そこを突破できたのは、現場の皆さんが協力業者さんへの研修会や、現地での地道なコミュニケーションを粘り強く継続してくれたおかげです。

山田:職人さんたちの間でも、ここ1年ほどで一気に「Architect Jump」の利用が活発になりました。マネージャーメンバーが「全体で切り替えよう」と旗を振ったことで、現場に「これは本気なんだな」という熱量が伝わり、パートナー側も自然と使い始める流れができていったのだと思います。

田中:特に象徴的な成果は、大工さんの請求電子化です。当初は「スマホを使いこなすのも難しいのだから電子請求なんて無理だ」と言われていましたが、推進し続けてきた結果、今では職人さんの8割が利用し、ほぼ100%で電子請求が活用されています。稼いだ金額がスマホですぐに分かるのが嬉しいというお声も。また、社内でのリアルタイム更新率は99%に達しており、一般企業でのシステム浸透率と比べても、異例の成果です。

山田:高齢の大工さんが、メールやLINEは使えないのに「Architect Jump」のスマホアプリだけは使いこなしているという話を聞いたときは、本当に浸透したんだなと感じましたね。私の担当の大工さんたちも、世代にかかわらず使いこなしています。

工期13%短縮、出戻り8割削減。そしてAIが拓く「次なる戦略」

── 導入から時間が経ち、具体的な数字としてどのような成果が出ていますか?

山田:導入後の効果は数字にも表れています。工期13%短縮、出戻り費用8割削減。 工程プリセット機能で基本的な工程が自動算出され、全業者が同じ工程表をリアルタイムで見られるようになったことが大きい。事務処理の時間も少なくとも2〜3割は短縮され、生まれた時間で現場のコミュニケーションを深めることができています。

田中:データの可視化も進みました。この5年間で入力されたデータがあるからこそ、Looker Studio(ルッカースタジオ)などを使って現場の状況を瞬時に経営に還元できるようになっています。

── 最後に、今後の展望を教えてください。

田中:次のステップはAIの活用です。過去のデータから最適な大工さんを提案する「AIレコメンド機能」のリリースを検討しています。相性や定性的な情報まで分析し、現場監督の判断をサポートすることを目的としています。

山田:この機能ができることで、間違いなく工期短縮に繋がり、大工さんやパートナーさんの稼働率向上や年収・売上の向上にも繋がると確信しています。AIがマネージャーの重要な業務の一つを引き受けてくれることはありがたいですし、大工さんのローテーション管理など、苦手とする人が多い業務の強力な武器になると思います。

今後、改めてこのJumpシリーズを監督業務の柱、そして管理側の柱として活用し、4大管理に限らず全ての管理において抜け目のない管理をしていきたいと考えています。

田中:現場、マネージャー、そして拠店長までが一気通貫で繋がり、さらにはお客様へも価値を還元していく。それが私たちの目指すDXの形です。

※インタビューの内容は取材時(2026年3月)のものです。