対談

2025.02.13

オープンハウス・アーキテクトが国産材活用の取り組みを拡大。 官民連携で取り組む意味とは。

オープンハウス・アーキテクトは、企業間連携による国産材活用プロジェクト「GOOD LOOP PROJECT」の立ち上げに続き、秋田県の県産材利用促進制度「あきた材パートナー」に登録。「あきた材」を採用した住宅が上棟をはじめており、2025年3月までに30棟の完工を目指しています。今回は、官民連携による国産材活用の取り組みに焦点をあて、秋田県農林水産部の佐々木様をお招きしてお話を伺いました。

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出演者紹介

  • 秋田県農林水産部 林業木材産業課 木材利用推進チーム 主査

    佐々木 松輝 様

    2007年に入庁。森林環境の保全部署で森林整備等に10年従事し、地域振興関連部署を2年経験。現在の林業木材産業関連部署で6年目。パートナーやサポーターとの連携をはかりながら、県産材の魅力を発信している。

  • 工事本部 関東木造施工部 注文施工G 次長

    杉山 祥一

    2023年にキャリア採用入社。総合不動産会社で木造住宅の施工管理を経験し、以降キャリアを通じて木造住宅づくりに携わり続けている。営業・設計・施工すべてに携わってきた知識とノウハウで建築と向き合う。

  • 建築管理部 渉外企画G 係長

    蔦川 忠宏

    2022年にキャリア採用入社。木造ハウスメーカーの資材購買・調達の経験を経て、オープンハウス・アーキテクトへ。会社の成長を通じて、建築業界を盛り上げたいという想いを持ちながら、各社との連携強化に励む。

国産材を活用することで守りたいこと

── 多方面で国産材活用が進む今、思うことを教えてください。

佐々木様:秋田県では県土の72%、84万ヘクタールが森林面積となっています。その内、杉の人工林面積が36万4,000ヘクタール、蓄積量が1億2,500万㎥で、これが令和4年度末時点では全国一の資源量となっています。国内で「木を伐って、使って、植えて、育てる」という循環を促進していこうという流れがある中で、秋田県でも森林資源を活用する取り組みを進めています。
秋田県はお米や野菜といった農産物、さらに海産物にも恵まれていて、それらは山から流れてくる水によって育まれています。脱炭素、炭素固定という側面も当然あるのですが、森林を活かしていくという点では、すごく大事なことなんです。

蔦川:近年まで木造住宅の構造材は、安く大量に入ってきていたこともあり、外国産木材を使うケースが多かったです。その中でターニングポイントになったのは、2021年のウッドショックで、外産材の供給が滞ったことです。
現在では国産材を使う流れができてきて、木造住宅における国産材の使用比率も増えています。環境面でもメリットがあり、どんどんスタンダードになってきているのかなと。ゼネコンも大型建築物の木造化にかなり力を入れ始めているので、ますます国産材の需要は増えてくるのかなと思います。

杉山:地元の木を使いながら、いわゆる大黒柱があって梁や垂木が見えていて、色々なところで木に触れられるというのが、古くからの日本の家というイメージがあると思います。構造材としては今も変わらず使われているものの、直接木に触れる機会が少なくなってきているのが個人的には寂しく感じています。
時代やライフスタイルにあわせて、木を使わなくても家ができるようにはなっていますが、もっとうまく循環するように対応できたら、私たちのイメージした木の家もまた出てくるのかなと期待しています。

国産材ならではの扱いやすさが家の品質にもつながる

── 国産材(あきた材)と外産材の違いはどんなところですか。

佐々木様:あきた材には、県内で製材される広葉樹製品も含まれていますが、代表的な樹種である杉については、やはり木目が綺麗に詰まっているというところですね。強度的な性質は、科学的には他の地域の杉と変わらないのですが、木目の均一性と細かさは、秋田の杉の大きな特徴だと思います。
また、太い丸太からよりたくさんの木材を取りつつ、木目を商品価値として付加する、板取りの文化があります。丸太から板を取る文化なので、内装でも魅せることができる点があきた材のいいところだと思います。

杉山:杉と比較されるSPF材※1という外産材があるのですが、一番の違いは、扱いやすさですね。軽さと強さ、そして柔らかい。
今お話を伺っていて「なるほど」と思ったのですが、感覚的に木目の均一感でビスとかクギの入り方が違うんですよね。密で細かいところだと硬い、広いと柔らかい。木目が均一だとスムーズに入っていって、硬い部分と柔らかい部分が交互に出てきたりしてしまうと扱いにくくなるのかなと。それに、切っているときの感覚も全然違いますね。
また、同じ材料で同じ長さでも、不思議と重量が違うように感じたりもします。外産材の場合は一本一本違う感じがするんです。国産材の場合は節の有り無しで多少の重さの違いはありますけど大体均一に感じるんですよね。そこはやっぱり大工さんとか施工側の目線で見たときに、非常に扱いやすいですね。
外産材も当然JAS規格でつくられているので、適正な強度はあるのですが、強度だけじゃない部分もあるじゃないですか。いい家を建てる上では、扱いやすさっていうのも非常に大切ですよね。

佐々木様:国産材が外産材と違うのは、それぞれの産地がきちんと把握できて、その地域のストーリーをお施主さんが感じることができること。例えば、あきた材を使用した住宅にお住いのご家族が、テレビなどで秋田の特集を目にした際に、うちはここの木を使っているんだよねと思ってもらえたり、秋田ってどういうところなのかなと調べてもらったり、そういう広がりができるのは、やはり国産材ならではだと思います。

蔦川:強度も一定基準ありますし、製材工場さんの方もどんどん技術が上がっています。そういった意味では問題なく建築部材として利用できますし、品質も安定しているイメージはありますね。

申請者としてではなく共に推進するパートナーとして

── あきた材の活用についてお聞かせください。

佐々木様:秋田県でも、少子高齢化や人口減少が課題になっていて、木材の供給力が高まったとしても、県内だけではなく、県外あるいは首都圏、輸出というように需要を広げていかなくてはならないと考えています。
これまでも県外住宅への支援事業を行ってきてはいたものの、その事業を活用していただく県外の工務店さんが限られていました。補助事業を活用していただける方々を本格的に増やしていかなければならないと考えたのが令和に入ってからですね。ハウスメーカーさんや工務店さんに使ってもらうだけではなく、我々と一緒に県産材を利用推進する同志となってもらうべく、パートナー制度が令和3年に立ち上がりました。
また、木材を供給する商社さんやプレカット業者さん抜きで県産材の利用推進はできないということになり、本年度からサポーター制度を新設しました。
現在では、「あきた材パートナー」は御社も含めた26社、「あきた材サポーター」は5社となり、今後もより多くの方に参加していただきたいと考えています。

蔦川:分譲住宅でも国産材活用を広げていこうという一般社団法人があったのですが、その定例の会合で、佐々木さんはじめ秋田県の方々とご挨拶できる機会がありました。
あきた材に興味を持ち始めた中で、私たちがお付き合いさせていただいている製材工場さんが、秋田県の能代に新しく工場を建設され、あきた材を使うことができるようになったこともあり、パートナーとして一緒にやっていきたいと申請させていただきました。

互いの知識やノウハウをあわせて新たな価値を

── 官民が連携することで得られるのはどんなことですか。

佐々木様:県産材の供給を増やして、使ってもらうためには、お施主さんやエンドユーザーの方々がどういう使い方をしたいのか、どういうニーズがあるのかという点も拾い上げて、県の施策に反映させることが大切になります。そのため、やはり御社のように年間5,000棟を建築されているような企業と連携したり、情報を共有いただくのは貴重な機会になります。

蔦川:私たちは供給側でビルダーなので、従来ではプレカット工場さんの方に条件をお伝えして、こういったものを使って欲しいというお願いはしていましたが、調達方法などについては、ある程度工場さんにお任せしていたところがありました。
こういうカタチで連携させていただいたことで、私たちとしても材料の調達や管理の面で、新しい可能性を感じられましたし、大きな勇気をいただきました。後押ししていただいたなと。

杉山:お互いに持っている知識やノウハウが違うのでそこをうまく共有していけると、何か新しい取り組みにつながっていくのではないかと思いました。

木を子どもたち、その子どもたちへ、引き継いでいきたい

── 今後について、既存の取り組みの拡大や新たな取り組みなどについてお聞かせください。

佐々木様:県産材を県外の住宅あるいは非住宅も含めて利用推進をしていくのは、これからも続けていきますが、個人的には見えるところになるべく使われるように、働きかけをしていかなくてはいけないと考えています。一時的に木をたくさん使ってもらえればいいというわけではなくて、暮らしの中に採り込んでもらって、次の世代に繋いでいきたいという想いがあります。

蔦川:構造材としては、かなり国産材が浸透してきていますが、家の中の見えるところにも使えるような商品づくりも意識して続けていきたいと思います。

杉山:見るだけではなく、触れたりすると体験として残りますし、本当にお家の中、暮らしの中の見えるところ、触れるところに木を採り入れていくのは、次世代に引き継いでいくという意味でもいいことなのだろうなと改めて感じました。

※1:SPF材 北米産の針葉樹であるスプルース(Spruce/トウヒ)、パイン(Pine/松)、ファー(Fir/もみの木)、3つの木の総称
※インタビューの内容は取材時(2025年1月)のものです。